夕暮れアーチ 御影大橋

 犀川、御影大橋はここ数十年の間に金沢旧市街に架かった橋の中でひときわ美しくまた独創的だと思う。
 石川県初の単弦ローゼ橋という一本のアーチで支える構造は上流側の景観を遮る構造を無くすために採用され、 またその景観を楽しめる歩道は上流方向に向かって中央部分が緩やかに曲線を描く凝った構造になっている(上流の犀川大橋、上菊橋と同様「景色を眺めるため」のベンチも設置されているの金沢らしい配慮) 
 ‘いもり堀脇’などと同様に歩道路面だけを照らす様にデザインされたシンプルでモダンな照明、アーチを印象的に浮かび上がらせるナトリウム灯照明、夏の色濃い夕暮れが見事に調和して出現した‘日常’の中の一コマ。 2018年07月26日 19時56分
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繰り返される‘湖上の夢笛’ 兼六園霞ヶ池

 百万石まつりに合わせて市内では様々な催し物が併催(6月第一土曜日の本祭の前後三日間)される。毎年恒例となっている、兼六園霞ヶ池に浮かべた小舟に乗った藤舎眞衣さんによる篠笛の演奏は、内橋亭から船出して霞ヶ池をゆるりゆるりと一周して戻るまで、その全てが終始夢の様な光景。ただでさえ現実と夢の境が曖昧になる晩春の夕暮れ時に、これ以上はないような設えなので無理もないかもしれない。
 現場に到着するのが若干遅れてしまったこの年、池の周辺は既に沢山の人で溢れていて・・ならばと栄螺山から池全体をゆったり眺める趣向に切り替えたコトが功を奏して、いつにもまして素敵な光景に出会えた。一人の素晴らしい、実力と華を兼ね備えた奏者、それを演出する僅かだけど確かな設え(控えめかつ効果的に仕込まれた照明、ワイヤレスでクリアに確実に音声を送る装置、熟練した船頭さん・・)が晩春の兼六園霞ヶ池、という最高の舞台を使って出現させた‘プライスレス’な夢の景色。2017年6月3日19時29分撮影
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銀のさざ波 兼六園

 兼六園に巡る豊かな水は400年近く!前に完成した辰巳用水から流れてくる。旧市街の真ん中の台地を10キロ以上に渡って僅かな高低差(10mあたり4cm)で運ばれてきた水はまず小立野口脇の沈砂池で土砂を落とし、澄んだ水となって園内の曲水を巡る。
 桜が少し盛りを過ぎて気が早過ぎる杜若が僅かばかりに咲いて、ツツジはまだまだ準備中のこの日、つい先程まで鏡の様に滑らかだった水面にさざ波を立てながら鴨がゆく。
 極めて穏やかな曲水の流れをユルユルと遡上する二羽の周りに複雑な波紋が次々と、銀色に淡く輝きながら前後左右に生じて・・・しばらくの間ウットリする眺めを出現させた。
2017年4月14日17時8分撮影 この場所を中心に 金澤コンシェルジュ通信マップ を表示

天徳院 中秋の朧月

 天徳院は3代藩主利常の正室で徳川秀忠(徳川家康の三男)の娘・珠姫(3歳!で結婚し三男五女を儲け24歳で病没)の菩提寺として1623年に開山。(この山門は1693年建立)
 中秋の名月をあちらこちらから望もうと旧市街を巡っている途中(兼六園から1,5キロくらい。クルマだとあっという間)なんともいい角度に、雲に見え隠れしながら浮かんでいるトコロに出くわした。雨が多い→雲が多い→朧月夜が多い金沢。 侘び茶の祖として有名な村田珠光が「月も雲間のなきは嫌にて候」(月は満月で煌々と輝いているよりも、雲がかかって見え隠れしている方が好きだ。) と言ったのは言外に深い意味があるにせよ、朧月はそれだけで美しく心が揺れるもの。こんな見事なロケーションならばことさら。2017年10月4日19時37分撮影
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真夏の大朧月夜 21世紀美術館

 一年中どの季節の朧月もそれぞれに趣があっていいモノだけど、夏のそれは、辺りに充満する草木の香り、体にまとわり付く湿気も相俟ってこの季節ならではの妖艶さがある、様に思う。
 美術館を整備した時、この場所にわざわざ移植されてきた美しい枝ぶりの松の背景に広がるダイナミックな夜空は、冬の神々しさとはまた趣の異なる妖しい輝き。
 この夜は私が映像演出をした能楽美術館のナイトミュージアムイベント当日。泉鏡花をテーマになかなかに幻想的な空間を設えたつもりだったけど、終わって外に出てみれば真夏の夜の金沢は負けず劣らずの設えで空間を満たしていた。2017年8月5日20時55分撮影
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主計町暗がり坂 花びらまぶし

 それにしても桜の観せてくれる眺めは多種多様。咲き始めてから散りゆくまでの三週間くらいの中で(夜に気温が下がり、春の嵐が少ないことも相まって桜が味わえる期間はそこそこ長い。満開の週末を二度楽しめる年もある)毎年の様に新しい小景に出くわす。
 例年より遥かに早く開花が進んだこの年、普段なら満開手前の主計町浅野川沿いの桜、は既に散りはじめていて・・・ならばと暗がり坂の様子を見に行ったら初めての光景に遭遇。
 散った花びらがあちこちに趣を加えるのはモチロンこの時期の風物だけど、流石に暗がり坂はちょっと別格。
 その昔ここを暗がりに紛れて茶屋街に足繁く通った旦那衆の艶っぽい想いの層がそうさせているのかは、分からないけど。2018年 4月5日19時34分撮影
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21世紀美術館 観桜回廊

 桜は満開の下包まれるように体感するもヨシ、窓から迷い込んだ一枚の花びらにしみじみするのもよし、それが心を揺さぶるシチュエーションは多彩で幅広い。 
 珍しく晩春の様に暑い日が多かったこの年の春のはじめ、久々例年並の‘寒さ’となったこの日、時折ぱらつく雨を避け、ちょっとだけ冷えた体を暖めながら21世紀美術館の回廊を歩いていたら‘スルッと’視野に入り込んできた枝垂れ桜に思わず足が止まった。
 シンプルで美しい美術館内部が夕暮れ時の外部をスパッと切り取った、この年とても印象に残る、そして初めて観た桜の光景。2018年4月5日18時30分撮影
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赤レンガの枝垂れ桜

 桜の名所は一般的に「沢山の桜が咲く場所」や「見事な枝ぶりの老木」などが多いだろうけど、金沢ではさりげなく咲く一本がその背景も含め‘密かな名所’になっているコトがしばしばある。 
 築100年以上経つ元兵器庫で重要文化財でもある県立歴史博物館の脇で桜をぼんやり眺めていたら、警備員の方に「あちらの枝垂れ桜もぜひご覧になって下さい。綺麗ですよ」と声をかけられ、初めてこの桜の存在を知った。 表からは見えない場所にあり、「通りがかり」につい視界に入るコトはまずないこの桜、金沢らしく「歴史ある背景と一体となって」うっとりする光景を出現させている。 
 金沢にいると「桜は一対一」でこそ味わいがある・・とつくづく感じる。延々続く桜並木も美しいけれど、それだけじゃない。一本の桜とゆったりと‘対話’をするように鑑賞する楽しみも多い街。2018年4月6日7時42分撮影
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桜の下をゆく人たちに。兼六園下

 桜は、それ自体が醸し出す味わいもしばしば夢の様だけど、そこに居合わせた人達もさりげなく、否応なしにちょっぴり違う次元に連れてゆく、ように思う。 
 ことさら花を眺めているワケではない人達をも、ゆったりと時に足早に、変化し続ける桜は巻き込んで、その瞬間だけの愛おしい風景を出現させる。私達を楽しませる四季の様々な変化の中でこういう‘魔法’が使えるのは桜だけかもしれない。 
 兼六園下から石川橋をくぐって広坂方面へ向かう人達、次の目的地に向かうのか、そろそろ疲れてきて家路につこうとしているのか、はたまた・・・ 
2018年4月3日18時19分
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花闇門 石引 慶恩寺

 ちょっぴり寒い無風の静かな夜、藩政期と全く変わらない狭い道筋の奥に
ほんの僅かにも・・揺れるコトなくたわわに垂れ下がる慶恩寺の桜。
 花の盛りを派手にライトアップする趣向はそれはそれで・・・
こんな風になすがまま・・・徐々に闇に吸い込まれて沈んでいく桜の情景はある種神々しさも感じられるほど、の眺め。(しばらく佇みながら上空を‘春の化身’が舞っている状況を空想した)

「春宵や屋根から上の花の闇」浅草に生まれ大正から昭和にかけて活躍した久保田万太郎が詠んだなんとも艶めかしい春の宵
この風景を眺めていて・・ふと思い出した。桜を巡る‘春の夜の想い’は時空を超えて様々な場所、時代に繋がっている様。2016年4月2日19時47分撮影 この場所を中心に 金澤コンシェルジュ通信マップ を表示