起伏の多い金澤旧市街では、日常生活の中に坂や石段を昇り降りする機会が自然と組み込まれているコトも多く、それは日々無意識のうちに「ダイナミックに連続して変化する風景」を目にしていたり、このようについ下を観て「ハッと」する機会が多いというコトでもある。
藩政期、毎年の祭礼時に神事能(当時の庶民にとって大きな楽しみだった。その日は皆ワクワクしながら登ったんだろうな)が開催された観音院に続くこの坂は、金澤らしいしっとりとした風景の変化もさることながら、つい見下ろす足元、石段の折々の美しさにもハッとするコトがしばしばある。
日当たりのよい南向き斜面、秋に枝から離れた紅葉の葉は雨に曝され陽があたり、人々に踏み固められ・・・冬になって雪が積もって溶けて陽があたり踏まれて・・・春を迎える前には色も抜けて厚みもなくなり、風化して石段と一体化したような風情。金澤で今も発展を続ける伝統工芸のモチーフの様にも見える(作家さん達が日々目にするこの様な景色から自然と影響を受けているコトは間違いないだろう)
画面中央から少し左下に一片、フワフワした水鳥の胸毛(ダウンボール)も落ちて留まっているのも、私にはこの周辺の豊かな生態系を感じるワンポイント。
春になれば、桜が散り、椿が落ちて、時として妖艶な雰囲気すら漂う見事な光景を見せてくれる。金澤の日常に潜む、本当の金澤の美の一つ。
2011年2月27日午後0時22分撮影
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