鏡花の街の揺蕩う水面 主計町

 浅野川の流れは女性っぽく浅く優しい、と漠然と捉えている方が多いと思うけど実は場所によって細かく流れ方、そして波音が違う。要因は傾斜や幅や底の形状(石の大きさ、形)・・そして小橋下の可動堰の高さ。それに加え同じ場所でも日々水量によって天候によって波立ち方、色も変わる。犀川に比べ川幅も狭く水量も少ないのでそういう細かい変化がよく分かる。控え目だけどちょっぴりドラマチックに変容しつつ浅野川の水は流れている。
 徐々に速度を落としながら梅ノ橋をくぐった流れは、浅野川大橋直前で急激に遅くなり、水深も深くなり(水遊びをする子供達のために注意を促す看板も立っている)主計町を映すあたりは、たっぷり水をたたえた湖の様にも見える。しばらくウォーターフロントの様なたゆたう水面を見せた川は(可動堰の塩梅でサラサラ流れている時もあるけど)小橋下で垂直落下する水音を伴いながらまた元の流れに戻る。穏やかな水面には夕暮れになると主計町の家並みがユラユラ映り「川沿いの茶屋街」の情緒にさらなる深みを加える。
 鏡花の生まれ暮らした界隈はこのすぐ裏あたり。時は流れてあちこちに煌々と灯りがともる現代でも、夕暮れ時から深まるこの界隈の妖美さは今も昔も変わらずそのまま。
2010年4月17日午後6時44分撮影
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