百万石薪能

百万石まつり、と言えばとかく華やかな行列に注目が集まりがち。
だけど実は、前夜の燈ろう流し、そして当日夜の薪能もとても魅力的。
晩春の濃い緑の薫りの中、ゆっくりゆっくり夜の帳が降りる頃に始まるこの二つのイベントは、金澤の魅力をしみじみ体感できる催し。
開演三十分前からの「子ども能・狂言」、その後二時間、これからの加賀宝生を支える若手から重鎮の方々まで出演される豪華な内容。
少しずつ増す暗さ、そしてこの夜の強い風に、紙垂が盛んにはためいて 炎がゆれ煙がたなびき、城内遠くからは風に乗って微かに蛙の合唱が聴こえ・・そんな中でゆっくりゆっくりと進行していく能を眺めるのはとても贅沢で、その本来の魅力が沁みてくる。
地謡と囃子の悠然とした流れ、全ての瞬間が美しい動きと佇み、・・野外の絶えず変化する環境での観能はなおさら「静の美」がひしひしと伝わってくる。
無料!というコトもあって気軽に立ち寄ってしばし眺め・・・虜になる人も多い。
(退屈そうに帰ってしまう方も中にはいらっしゃるけど)
こんな良質な(そこそこお金のかかる)能の催しが無料でさりげなく行われ、毎年多くの人達が当たり前の様に楽しむ。
藩政期の金澤に花開いた多彩な文化が受け継がれ発展し続ける理由はこういうトコロにもある。単に「戦災を免れて」残っているワケでは全くない。
2012年06月02日19時56分撮影
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